ネットの片隅で愛を叫んだけもの


忘れられない女がいる
初めて 憧れの女から好きだと言われて 初めて好きになった
初めて ぼくのことを理解してくれて ぼくの凍りついた心を溶かしてくれた
初めて愛した女
でも彼女とは結ばれなかった

彼女の部屋に誘われて 抱き合った夜 彼女は言った
君って野獣みたいなキスをするのね
だって憧れの女と抱き合えて嬉しかったんだもの

あれからどれくらい経つのだろう
行き場を失った愛が ぼくを苦しめ続けてきた
過去をひきずっていると 新しい人生は始まらない
いい加減 過去をひきずるのは止めようと思った

忘れてしまえば楽になれるのに 簡単には忘れたくない自分がいる
彼女に受け入れてもらえなかった愛をぼくが忘れてしまったら
彼女を愛したことさえ幻のように消えて 無意味になってしまうのが嫌だった

どうしても彼女への想いを形にしたかった
彼女を愛したぼくの気持ちが本当だったことを証明するために
彼女を愛したぼくの気持ちに報いてあげるために

誰にも遠慮をしなければ 誰にも思いやりなんか持たない
ただ ぼくの本当の気持ちを吐き出そうと思った
彼女に言わなかったことを全て吐き出す
言葉には言霊が宿っているから 嘘でも言い続けたら 真実に思えてくる
だから ぼくは嘘は書かない
彼女に言った嘘を全て訂正する
どんな汚い言葉を使ってでも 人を傷つけてでも 本当の言葉しか書くつもりはない

彼女に告白された
絶対に幸せにしてくれる?
一生愛し続けてくれる?
絶対に私を裏切らない?
ぼくはあなたが好きだとしか言えなかった
なぜなら 体で誘われてひっかっかった奴のことを忘れたかったからだ それはぼくには汚点だった
そして ぼくが友達に戻ろうと言ったら泣いた奴が彼女にぼくのことをふったと言っていたからだ

憧れの女に告白されて ぼくは彼女のことを好きになった
やがて ぼくは彼女のことを愛してしまった
でも体で誘われてひっかっかった奴のことを忘れたかったから彼女とは友達で我慢しようと思った
友達で我慢しながら 愛を伝えようとした
でも愛している人と友達で我慢するなんて 無理だった
お互い好き同士なのに 嫉妬しあったり 喧嘩したり 本当に辛かった
ぼくは彼女に本当のことを伝えられないまま 毎晩 彼女のことを想って 泣き続けた

一瞬だけ 彼女への愛が伝わった瞬間がある
泣きながら幸せになってほしいと彼女に言ったときだ
彼女はこんなに愛されていると感じたのは初めてだと言ってくれた
ぼくはその言葉だけで幸せだった
愛を受けいれてくれるだけで満足だった
彼女はつきあおうとまで言ってくれた
あまりにも突然だった
ぼくは幸せにする自信がないから友達で我慢すると嘘をついた
馬鹿げた嘘だ こんなことを言ったら愛していると信じてもらえなくなる
本当は奴にひっかっかったことを忘れたかったからだ
彼女は君が幸せにしてくれなくても自分で幸せになるからつきあおうと言ってくれた
本当に嬉しかった
でも彼女とつきあうには 二人の間に挟まっている奴が邪魔だった
奴は彼女にはぼくのことをふったと言って ぼくには私たちつきあった?と聞いてくる
ぼくは奴のことを言おうか言うまいか迷った
だって本当のことを言ったら 彼女は苦しむ
そして 好きでもない奴と寝たことを彼女に知られるのが嫌だった
汚れた自分を見せることができなかった

ぼくの口から出た言葉は虚しいものだった
生まれ変わったら一緒になりたい
今つきあわないで 来世で一緒になることができるのかしらと彼女に嫌味を言われた

その後 ぼくの愛が彼女に伝わることは二度となかった
君が本当に私のことを好きなのか分からないと嫌味を言われ続けた
やがて 彼女とは疎遠になっていった

最後に彼女から来たメールで いっぱい傷つけてごめんなさいと謝られた
ぼくは謝ってほしくなんかなかった
ただ ありがとうと言ってほしかっただけなんだ
ぼくの愛を受け止めてほしかっただけなんだ

行き場を失った愛は ぼくを苦しめ続けた

ぼくは本当にあなたを愛していたもの
だからこんなにも苦しいんだ
でも あの最悪な奴がいたから選べないんだよ
ぼくはあなたさえ幸せになってくれればいいと思ったから 奴のことは話さなかったんだよ

ぼくは本当にあなたのことが好きだった
ぼくは本当にあなたを愛していた
心の底からあなたを愛していた
もし神様がひとつだけ願いを叶えてくれるなら
ぼくはあなたに本当のことを全て話したい
本当のぼくを知ってほしい
行き場を失った愛を受け止めてほしい
たった一言 ありがとうと言ってほしい

彼女にどうしてぼくを選んだのか聞いたことがある
君と私は求めてるものが同じで 君は私が持ってないものを持っていると感じたからだと言っていた
ぼくなら あなたを幸せにすることができたのに
そして ぼくも幸せになることができたのに