「幻魔大戦deep1」 平井和正

やっと、追いついた、というのが今の気持ちだ。
10年前に平井和正さんの小説に出会って以来、彼の作品を愛読し続けている。
でも、現在進行形で読むのは今回が初めてだったりする。
その間、平井氏は新作を書き続けていたのだけれど、当時の僕は新作には物足りなさを感じて、過去の名作ばかりを再読し続けていた。体調を崩して、時間ができたので、近年の作品を読み始めたら、それなりに楽しめたのだけれど。
というわけで、リアルタイムで平井作品に触れることができて、感無量。しかも、それが「幻魔大戦」の新作ときたら、感慨もひとしおというわけだ。

さて「幻魔大戦deep1」を一読した感想は、正真正銘の「幻魔大戦」が帰ってきたという感じだ。
高校生の東丈(!?)がGENKENを作らなかった世界。
そして、28、9歳の東丈がムーンライトに出遭わなかった世界。
その世界の延長上で舞台は現在、東丈は平穏な生活を送ってきた。何か違和感を覚えながら・・・。
物語は静かに始まる。
嵐の前の静けさと言ったところか。
おなじみの登場人物がでてくる度に、旧友と再会したような感銘を受ける。
でも、パラレルワールドになっても、それぞれの関わりあい方は変わっていない。業の深さを感じる。
おそらく、現代社会に警鐘を鳴らす作品になるだろう。
東丈は救世主に目覚めるのだろうか。
今回の時を継ぐ者は、杉村優里さんにイメージがダブる東丈の姪の東美叡だろうか。
ムーンライトは登場するだのだろうか。
井沢郁江たちGENKENのメンバーは登場するのだろうか。
続きが楽しみだ。
でも、平井氏のことだから、一筋縄では行かないだろう。きっと思いもよらない展開が待ってるに違いない。

とにかく、今は「幻魔大戦」の新作が読めることで胸がいっぱいだ。
この胸が締め付けられるような切なさと、夢見の感覚は「幻魔大戦」以外の何者でもない。
おかえりなさい、「幻魔大戦
おかえりなさい、東丈。