「正雪記」①山本周五郎・著

山本周五郎先生の「正雪記」。
由井正雪に興味があって、前々から読みたかった作品です。
山田風太郎先生の「外道忍法帳」(だったかなぁ??)にも正雪はでてきたけれど、確か悪役だったような・・・(でも、お話としては、面白かったですよ)。
こちらは正真正銘、由井正雪が主役のお話です。

☆あらすじ
「立身出世を夢見て一介の染屋職人の倅から‘侍になる,野望をいだき江戸へ出奔した由井正雪島原の乱で浪人たちの衆望を集め、軍学者として次第に頭角をあらわし、男としての栄光の座をつかみながらも、彼の胸には抑えがたい支配権力へのむなしい怒りが去来する……。徳川幕府のゆるぎない天下に挑戦した正雪の壮絶な生涯を、老中松平信綱との対決のなかに描いた歴史長編」と本の裏に書いてます。

本当に長編ですね。
三部構成になっています。
読み進むと最初のほうのお話を忘れてしまいそうなので、とりあえず第一部の感想を書きましょうか。

はっきりいって、とてもイイです。
久しぶりに、どっぷりと小説の世界に浸っています。
第一部は正雪の幼少時代から島原の乱に赴く前までが書かれています。
修行編といったところでしょうか。
正雪が生きた時代は徳川が天下をとり、用済みとなった侍たちは、浪人となり、天下泰平のために幕府から弾圧され、煙たがられる存在になっています。
そんな時代に、正雪は生まれ育ち、弱い立場の人間や社会を、自分の目で見、自分の耳で聞いて、成長していきます。
そして賢くなるために修行にでて、数奇な運命をたどっていきます。
支配権力に弾圧される一般大衆というのは、今の時代にも通じるものがありますね。
正雪が出会う一介の侍や弱者たちの台詞や立ち振る舞いは、心に響くものがたくさんありました。
切ないです。
山本周五郎先生の作品が大衆文学といわれているのに納得しました。
物語としても、とても魅力的です。
幽霊談、埋蔵金占星術、隠れ切支丹、天草四郎、待つ女、追う女、女の執念・・・。
ワクワクしませんか??
数え上げたら、キリがないぐらい魅力的なキーワードがいくらでも出てきます。

本当に質の良い作品です。
さあ、それでは続きを楽しみましょうか。
ドキドキ、ワクワク。